山に登るということ

今月初めに、年一回、恒例の登山に行ってきた。友人と三人、毎年今年は○○の山に登ろう、ここなら縦走ができるかも、などと言いながら計画する。今年は長野と群馬、新潟の三県にまたがる白砂山(しらすなやま)に登ることにした。標高1500m付近にある登山口から2138mの山頂を目指す。登山道を片道6.5km歩く。平均斜度5度。

日帰り登山だから担いでいくのは衣類と食事、水くらい。途中水場があるから補給もできる。リュックにまとめて5kgほどの荷物になるか。登りは楽しい。筋肉を使って黙々と登っていけば良い。数年前、角度の急な山に登頂できなかった反省から、力を抜き筋肉を休ませながら歩く。息の上がるような登り方をしない。

白砂山は堂岩山(どういわさん)の先にある。途中南下すれば八間山(はちけんさん)へ行くこともでき、2000m級の三山を縦走することができる。登りはじめて2時間、堂岩山(2051m)の山頂に着く。まだ森の中で(森林限界を超えていない)眺望はないが20平米ほどの広さがある。水場に下りていくこともできるから、ここにテントを張って(泊まり)縦走することもできることが判る。少し進んで堂岩分岐に着く。ここを南下すれば八間山(1934m)へ行くこともできる。眺望が開け、白砂山頂までの稜線が見える。あぁ、この風景を眺めるために登って来たのだ思うくらい素晴らしい。

山頂が見える稜線を3kmほど歩く。360度見渡す限り山の海である。最後の登りがきつい。14時登頂。でも登りやすい山だと思う。30分ほど食事を摂って休む。担いで上がってきた食事のほとんどを食べてしまう。夕方までに下れば良いのだ。14時30分、下山開始。この時間だと八間山を回る縦走は無理だなと思う。日が暮れるまでに下山しなければならない。登りが比較的楽だった分、下りがきつい。往路で下りだったところは復路登らなければならない。

16時30分、2時間歩いても復路の半分まで来た気がしない。初め1kmほどのところにあった二本の沢になかなか着かない。17時30分、登山靴の中の爪先が痛くなり、膝も痛くなってくる。下りの膝の痛みは必須だが、いつまで歩けば良いんだという思いと相乗してつらい。17時、日没。ヘッドライトを頼りに二つの沢を渡る。17時30分、下山。我々が駐車場に残る最後の車だった。

なぜ山に登るのか。2千メートルほどの日帰り登山だから大したことは語れないが、仕事することに似ている気がする。登山道に入れば登ることに何の迷いもない。黙々と登ること。そして安全に下ってくること。地図やコンパス、高度計を用意して自分がどこまで登ってきたのかが判ると良い。一人で登ることを趣味にする人もいるが一緒に登る友人がいると楽しい。我々は麓に温泉のある山へ登ることにしているが、温泉にせよ食事にせよ付随する楽しみが何かあると良い。数週間が過ぎてもう、来年どの山に登るかを考え始めている。